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クリエイティブディレクター長田敏希氏が語る「今求められるデザインとは?」~企業課題をデザインで解決!? Vol.1~ 

長田敏希

株式会社クレオでクリエイティブディレクター、およびブランドマネージャーという二つの立場でチームを率いる長田敏希(おさだとしき)さんは大企業・中小企業を問わず、企業ブランディングに関するさまざまな領域で多くのクライアントからの支持を集めています。今回のインタビューでは、長田さんがこれまで手掛けてきた事例を通して、今、クリエーターに求められている仕事を紐解きます。

 

きっかけは、コンペ連敗という挫折。

弱冠31歳ながら、多くの事業責任者や経営者から信頼されている長田さん。ところが、その燦然たるキャリアは意外なことに、スタート時点で経験した、ある挫折からはじまったといいます。

「東京工芸大学の広告研究室でデザインや広告の基礎を学び、クレオに入社して最初の2年はメーカーの既存の商品のパッケージデザインを定型のポップに流用する仕事などをして修業を積みました。ようやく新規開発のチームの一員になったのは入社3年目でしたが、参加した競合コンペで3~4回ほど連敗してしまったんです。ヘコみました。でもそれは、仕事に臨む自分の姿勢をイチから組み直さねばならないことに気づいたきっかけでした」

自己分析した結果、それまでの自分は画像処理やデザインのクオリティを上げることに夢中になるばかりで、クライアントの企業戦略や問題解決につながる提案ができていなかったことに長田さんは気づきました。

「コンペで採用された他社のアイディアと自分のものを比べてみても、それは歴然としていました。望まれるデザインというのは、単に見た目が美しいとか、カッコいいものなのではなく、中・長期的な目で見てそのプロジェクトや企業の方向性に合致したものでなければならない。そのためには、クライアントのことをもっと深く知らないといけない。そんな風に自分の課題が見えてきたんです」

その後、中小企業診断士や広告業界のセミナーに参加したり、ブランディングやマーケティングに関する本を読むなどして知識をたくわえるうち、少しずつ成果を出せるようになっていきました。

 

相手企業とじっくり向き合うことが何よりも重要

長田敏希

現在、長田さんの仕事の半分以上を占めるのは、1年かそれ以上の長期間にわたって企業ブランドを構築する仕事だといいます。中でも、優れた情報発信力を駆使して新たな顧客開拓に成功した米穀店「小池精米店」のブランド構築には、プロジェクトの初期の段階から深く関わりました。

「はじまりは『ホームページをリニューアルしたい』という依頼だったんですが、3代目社長になって間もない小池理雄さんとお会いしたとき、名刺に印刷されたロゴマークがホームページのマークと異なっていることに気づいたんです。そこで、根本的なブランディングが必要だと考え、提案してみることにしました」

長田さんのブランディングは、経営者や現場の担当者に至る社員と1日約4時間をかけて話し合い、これからの方向性を確認し合うところからはじまります。

「小池社長と最初に話し合ったのは、3C分析について。つまり、『自分ならどんなお米屋に行ってみたいか?』という顧客(Customer)分析、『ここなら誰にも負けないというものは何か?』という自社(Company)分析、『ここはあいつに負けているというところは何か?』という競合(Competitor)分析です。いきなりそんな固い話から始めると、ポカーンとした顔をされてしまう恐れがあるので、ブランディングの基礎的な説明から始めることが多いんですが、小池社長はすぐに理解していろいろなアイディアを出してくれました」

例えば、「パンは買うとき楽しいけど、お米選びは価格で選んでしまっている」とか、「美味しい炊き方を教えてくれたり、ライフスタイルを提案してくれるようなお米のコンシェルジュがいたらうれしい」など、その後のブランディングに必要不可欠な重要なアイディアが次々に出てきたといいます。

また、「なりきりゲーム」と題したワークショップでは、お米の主な購買者である主婦の1日の生活パターンを洗い出し、お米を買うときの気持ちをシミュレーションして顧客を分析。こうして集められたさまざまなキーワードをもとに長田さんが提案したブランド・コンセプトは、「産地直米、お米を楽しく」でした。

「通常、お米の流通はJAを通しますが、小池精米店は自らの足で生産者とパイプを作っているため、産地直送でお米を提供できるという強味がありました。また、そうした製品の優位性だけでなく、お米を楽しく味わいたいという顧客の潜在意識に応えられるだけの人材も多くいたため、『産地直米、お米を楽しく』というワードに結びつきました」

長田敏希

ワークショップでは、質問への答えを付箋に記入して貼っていきながら行われました。お茶とお菓子を用意して、ざっくばらんな雰囲気にすることも重要。

長田敏希

産地直米(製品優位性から抽出)
お米を楽しく(顧客の潜在意識から抽出)
生産者と生活者の架け橋になる(理念・ビジョンから抽出)

http://asahimatsuhikari.com/

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小池精米店のホームページには、ブランド・コンセプト「産地直米、お米を楽しく」が大きく掲げられています。

長田敏希

ツヤ、香り、食感など十人十色ならぬ、四十七都道府県、四十七色の特色を持つお米(農家)の個性を、グラデーションにより体現した小池精米店のロゴマーク。

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長田敏希

あきたこまち(秋田)、ササニシキ(宮城)、ひとめぼれ(岩手)、まっしぐら(青森)、つや姫(山形)、コシヒカリ(福島)の頭文字を生かした詰め合わせ贈答品「あさひまつ光」のパッケージデザイン。各ブランドのお米をそれぞれの県の形にして表現しています。

コンペ3連敗という挫折に負けず、そこから自ら学んだ「今求められているデザイン」。長田さんは今や、広告デザイナーという枠を飛び越え、ブランド・マネージャーの職域にまで活動の場を広げています。

さて、インタビュー1回目はこの辺で終わりとします。ブランディングの手法は、クライアントごとにアレンジされ、日々、カスタマイズされているという長田さん。インタビュー2回目は、長田さんのブランドに対する考え方や、その役割について話をうかがってみることにしましょう。

  長田敏希(おさだ・としき)
1984年生まれ。株式会社クレオのクリエイティブディレクター/ブランド・マネージャーとして、経営戦略立案から、CI、VI、商品開発、空間演出等、ブランディングに関する様々な領域で、右脳発想を重視したブランド構築ソリューションを提供。大手コンビニエンスストア、飲食チェーン、食品メーカーを中心に事業活動を行っている。また、東京農業大学で非常勤講師として地域ブランド戦略のゼミを持ち、学生、社会人、地域住民を対象にした体験・実践型の授業を行う。世界三大広告賞のカンヌライオンズ、The One Showをはじめ、D&AD、NY ADC、iF デザイン賞、グッドデザイン賞、毎日広告デザイン賞など国内外の受賞多数。